北海道


鬱蒼とした森林に囲まれている。特急街道にある不思議な秘境駅

10.12.16執筆


スーパーおおぞらは振り子を効かせてあっけなく通過していった


板張りのホーム、国鉄型の気動車…。「仮乗降場」そのものだ

 北海道にある駅には、列車交換のために信号所として開設されながら、わずかにある旅客のために乗降ができるよう、国鉄時代に「仮乗降場」として存在していたものが多くある。仮乗降場は時刻表にも掲載されず、民営化時に、これらのいわば"中途半端な駅”を廃すため、駅として昇格させることにした。その一つが、ここ古瀬駅である。
 札幌から釧路へ向かう、スーパーおおぞら号の特急街道であるこの駅は、根室本線の交換設備として信号所として開設され、当初は閉塞扱いのために係員が配置されていた。無人化後は周辺にわずかに住む住民のためのみに使われる駅となり、ひっそりとした森林の中に佇む、根室本線というメインルートにそぐわない駅が存在することになった。その成立過程ゆえ、交換を行う列車以外は普通列車でも多くが通過してしまう。
 筆者一行は、JR北海道をあげて有名にした「日本最長鈍行」こと2429Dに乗車し、ここで特急の交換待ち合わせのためのしばしの停車時間の際に降り立った。対向式ホーム2面2線は互い違いになるように設置されていて、かつての閉塞扱いを偲ばせる駅構造である。1線スルー構造となっており、下り列車も交換時は上りホームに入線する。
 列車そのものの乗客は少なくなく、中にいた駅マニアらしき数人と共に下車した。更にはどこからか1台の乗用車が。秘境駅という名が知れてから、同じようなことを考える人が日増しに増えていくことを実感させられた。まあ、自分もその一員であり、情けない限りなのであるが。

 やがて特急が通過。高速で走り去っていく列車の乗客には、駅があるということさえ気づかないでしまうであろう駅だ。先を急ぐ客に、何もないだの秘境だのはどうでもいいこと…。何か考えさせられるものがあった。