北海道


何もない、道もない、線路と森とトンネルしかない…

10.10.13執筆


トンネルから飛び出す普通列車。でもあっけなく通過していく


本日最初の特急、スーパー北斗1号。路線は複線、特急&貨物街道で線路は賑やか


釣り人用の駅であることを思わせる駅名標。基準に満たなきゃリリースしましょw

 秘境駅訪問家・牛山隆信氏による秘境駅ランキングで堂々の1位、同氏の著書『秘境駅へ行こう!』でも筆頭に挙げられているのが、ここ室蘭本線の小幌駅。いつか訪れてみようと思っていたが、初めての北海道鉄道旅行で楽に実現することができてしまった。
 前日の晩は東室蘭駅前のビジネスホテルに宿泊、4人で行ったためツイン2部屋で泊まっていたのだが、それまでの旅程の疲れか隣の2人がどうしても起きてこない。ドアをノックしても部屋に電話をかけても出てこない。まあ後で特急で追いかけてくれるかと思い、心配を拭いきれないまま筆者と友人の2人だけでここ小幌を訪れた。
 ここに向かう列車の途中でも携帯で電話をかけ続け、小幌に着いてからも不安が蓄積しあまり秘境駅を味わっている感じがしなかった。でもそれでは文章にならないので、思い出せる限りをここでレポートしようと思う。

 東室蘭からの始発列車で降り立つ。ワンマン列車ゆえ、降りる前には運転席のところへ移動して待っているため、前面展望タイムとなる。トンネルから出た途端、何もない山の狭間に板切れホームが置かれているというとんでもない光景が目に飛び込んできた。
 小幌は、室蘭本線の始発駅・長万部からわずか2つ目。しかし、北の大地北海道は妥協は許さない。駅に面する道路はなく、上を走る国道につながる道もない。前後はトンネルで、山に囲まれた場所にありマジで秘境。南側にはこれまた秘境として名高い小幌海岸が広がっている。駅を利用するのは秘境駅マニアか小幌海岸の釣り人くらい。(小幌海岸に釣りに行くフィッシャーの話はネットに数々あるので興味ある方は参照されたし。)駅名標には、ヒラメが描かれたステッカーが貼られていて、基準に満たないヒラメをリリースするよう呼びかけて(?)いた。駅には保線小屋があり、客のためというよりは保線基地の目的で残存しているらしい。
 南へは道が通じているが、小幌海岸へ向かうのには急傾斜を通らなくてはならない。所要時間は5分とされ、次の列車まで時間はあるのだが、例の心配事でそこまでする意欲がわかなかった。仕方なく、駅から離れることなく時間を潰す。携帯の電池も底をついてしまい、連絡手段も途絶えた。ここで死んだら、小幌に住んでいたあのオッサン(TBS系でこの話が放送された。詳細はググってくだされ)と同じになってしまうやないか…(汗
 だが、秘境駅とはいえここは函館からの特急街道で通過列車はそれなりに多い。線路も複線になっている。しかもこの時間は貨物列車の通過が多く、待ち時間の間にも上下線いずれも多くの列車が通過していった。やがて函館からの最初のスーパー北斗もやってきたが、もちろん高速で走り去っていった。普通列車も通過列車が多く、停車するのは長万部方面が5本、東室蘭方面が3本の計8本/日のみである。
 列車の通過前には構内踏切の警報機が作動するためそれはあらかじめ分かるのだが、列車の接近を視覚として知らしめるさらに恐ろしい光景があった。なんと、トンネルの出口から霧がどんどん出てくるのだ。理論は言うまでもない。早朝、トンネル外の気温は高くなるけれども中の温度はなかなか上がらない。そのため、列車がトンネルの空気を押し出すとその中の水分が凝結して霧と化すのだ。北海道とはいえ道南は残暑も厳しく、この霧が気持ちよく感じられた。

 ようやく、迎えの列車がやってきた。まだ連絡はつかず、気持ちが焦ったままもったいなく駅を後にする。
 やがて、上野発の豪華寝台「北斗星」ともすれ違った。東京から来る列車もあの最強秘境駅を通過している。乗客の目にはどう映るだろうか…それは、自分でそれに乗って確かめてみないとわからない。あとから特急でここを通過した友人の話によれば、「あっという間に通過した。何もなかった。」で終わるらしいが。