四国地方


明治期に建てられた洋風駅舎を忠実に再現。土産物店が入っている

11.2.21執筆


発車を待つ電車と、松山の新名物「坊っちゃん列車」


道後温泉本館。漱石も愛した温泉だ

 松山を訪れるのであれば絶対に欠かすことのできない名所、道後温泉。白鷺が羽の傷を癒やし飛び去っていったのを、村人が見つけて温泉を発見したという伝説があり、これが道後温泉の発見だとされている。夏目漱石の小説『坊っちゃん』に多く登場し、漱石自身も松山で中学校の教師をしていた頃、ここを愛してやまなかったといわれている。
 駅からほど近いところにある道後温泉本館の建物はあまりにも有名。1894年(明治27年)竣工の木造のどっしりとした外観。皇室専用の湯殿で、昭和天皇もお使いになった「又新殿」や、漱石を偲んで作られた「坊っちゃんの間」など、見学要素もいっぱい。お茶やお菓子などがついた接待セットもあるが、ただ入るだけなら「神の湯階下」(400円+貸しタオル60円)で楽しめる。ただし浴槽で泳いだ場合には、翌日「湯の中で泳ぐべからず」の張り紙がされますのでご注意を(笑)。

 道後温泉駅には、松山の新名物として2001年に登場し話題になった「坊っちゃん列車」が乗り入れる。これまた『坊っちゃん』の一節に登場するもので、当時松山を走っていた汽車のことを書いている。現在、松山市駅から1日3往復が運転。かつては、記念品セット(プレートなど)がついて1乗車1000円、それも1区間乗車のみと大変"お高い”乗り物だったが、今では1日乗車券に100円を加えるだけで乗れるようになった。牽引しているのは本物の蒸気機関車ではなくディーゼル機関車だが、「路面を走る客車列車」「軌道を走るディーゼル車」はいずれも松山が唯一と、鉄道ファンとしても実は価値が高い。坊っちゃん列車のために、軌道用のディーゼル車の運転免許「乙種内燃車操縦者免許」も復活したほどだ。
 駅舎は、明治期に建てられたものを再現した立派なもので、1階では土産物店が営業。駅舎脇には坊っちゃん列車専用引き込み線があり、運用の間合いにはここに車両が入ってゆっくりと見学することができる。

 文豪ゆかりの地で、アクセスも良いことから、近年は観光地として多方面で整備がすすむ松山。鉄道好きにも十分楽しめるこの街は、四国の代表的観光スポットとしてこれからも発展していく。

参考:道後温泉旅館協同組合HP