関東地方


駅に屋上庭園が登場。改札から直結、区民の憩いの場に

11.4.28執筆


「ふくにわ」からの眺望。新宿副都心、晴れた日には富士山も見渡せる


コンコース。外光をふんだんに取り入れた省エネ設計

 井の頭線は、若者の街・渋谷と、住みたい街ナンバーワンの吉祥寺を結ぶ全長12kmあまりの小さな路線だが、編成ごとに7色のカラーリングがされていることや、沿線に植えられたあじさいのライトアップがあることなどの魅力が多く、全国的にも知名度の高い路線のひとつである。
 永福町駅は、そのほぼ中間地点に位置し、各停が急行を待避できる設備を持った唯一の駅である。駅周辺は東京のベッドタウンとして発展し、乗降客も線内で多い部類に入る。

 しかし、改札が北側にしかなく、ホームとの連絡が地下通路で階段のみという、バリアフリー化の特に遅れた駅でもあり、かねてから橋上駅舎化の工事が行われてきた。その結果、2010年3月21日に橋上駅舎の仮運用が開始され、同時に南口が開設された。その後も駅ビル「京王リトナード永福町」の建設工事が進められ、こちらはほぼ1年遅れて今年3月23日にグランドオープンを迎えた。
 駅ビルは、スーパーやコンビニ、各種飲食店や携帯ショップなどが入居する、いたって普通の商業施設である。しかし、その最大の目玉は、屋上庭園「ふくにわ」だろう。公募で愛称が決定したこの屋上庭園には、色鮮やかな数々の花が咲き誇り、駅利用者のちょっとした休憩スペースになっている。屋上は4階レベルの高さだが、周囲に高層の建造物が少ないため遠くの眺望を楽しめ、新宿の副都心や東京タワーが見渡せる。視界の良い日には富士山も見えるそうだ。
 屋上庭園は、市民の憩いの場であるとともに、屋上緑化による空調使用量の削減も期待されている。


「冬の像」

 一方、改札を出て左手、目に飛び込んでくるのが、人の背丈と同じ大きさの彫刻だ。これは、永福町にお住まいの彫刻家・佐藤忠良さんが制作した「冬の像」。北海道伝統の織物で作ったマントを身にまとった女性が立っているという像である。寒さに耐え、凛とした佇まいで立ち続けるその姿は、我々に強いメッセージを伝えてくれる。

 リニューアルを完遂させた永福町駅。杉並の新たな商業スポットとして今後も注目されるだろう。屋上庭園は、地域の結びつきが希薄に鳴りつつあるといわれる現代社会の中で、豊かなコミュニティを生み出し、地域をより明るくするのにも大事な役割を果たすであろうことは間違いない。

(佐藤忠良さんは、今年3月30日に逝去されました。謹んで哀悼の意を表します。)

 
(左)3月にオープンしたばかりの京王リトナード永福町が入る駅舎
(右)旧駅舎。当時は地下通路を通ってホームへ連絡していた(2009年8月撮影)