関東地方


周囲に建造物はなく、田園風景の中にある。相模線唯一の完全無人駅

11.6.3執筆


自動券売機も設置されておらず、乗車駅証明書発行機が備え付けられている


駐輪場の地面に並べられているのは…


夜の入谷駅。闇と静けさに包まれ、秘境感も感じる

 相模地方を南北に貫く相模線。地元住民の足として長い間親しまれている路線だが、電化されたのは平成に入ってからのことである。沿線は宅地開発が進んだが、何故かここ入谷駅だけは、周辺を畑に囲まれていて、ローカル線の駅の風情がある。
 実はここ、もともと相模川の砂利の積み出し駅として機能していたそうで、上の写真の右側が、その積み込み線の跡地らしい。


駅舎はなく、
簡素な駅名標が立つ

 駅は、沿線の中でも大きな都市である海老名の隣だが、小田急線の座間駅が近く、1日の利用者数は1,000人ほど。相模線で唯一の完全な無人駅で、改札機や券売機は設置されておらず、乗車駅証明書発行機が備えられていて、下車駅で運賃を精算する仕組みになっている。Suica用の簡易端末も設置されてはいるが、チャージができないため、残額不足時は他の利用者と同様、乗車駅証明書を持って乗ることになる。
 電車は日中ほぼ20分間隔で運転されており、到着時刻が近づくと客がぽつりぽつりと集まってくる。やがて、205系最終グループで、他と前面スタイルが異なる4両の電車が入線。ここでどっと乗り降りがあるが、すぐに駅を離れ、再び静けさが戻ってくる。

 周辺を散策してみる。ホームは線路の東側にあるが、両側に駐輪場が設けてあり(西側のそれは自然発生?)、跨線橋を使って線路を渡ることができる。東側の駐輪場のほうは地面をコンクリートで固めてあると思ったが、よく見てみると、それは廃枕木を並べたものだった。寿命が比較的短い木製の枕木の再利用はよく見かけるが、耐久性のあるコンクリート枕木がこのように利用されている例は初めて目にした。

 筆者は相模線に初めて乗ってから、相模線の他の駅とは一線を画した独特な雰囲気に惹かれ、幾度かここを訪れている。いつ何時訪れても、駅は静けさに包まれ、夜間に訪れればその闇の風景からは秘境感も感じられる。

 相模原。東急「田園都市線」にその名前を残すように、もともと田園地帯だったところを、鉄道の開発と並行して大胆に宅地開発されてきた地帯だ。それでも、まだかつてを偲ばせる風景が、ここには残っている。都会の喧噪を忘れ、ちょっとした息抜きに、ふらりと出かけてみたい。