関東地方


一日5往復しか入線しない吾妻線の終着駅。駅舎はなく小さな待合室がくっついている

11.3.6執筆


ホームに立つ地蔵

 群馬県の渋川からのびる吾妻線の終点。今でも石灰石輸送の貨物列車が運転されていたり、沿線に立ち並ぶ温泉への客のために特急を上野から走らせていたりという路線。八ッ場ダム問題で存続疑問の日本一短い樽沢トンネルもこの線にある。大前駅まで延伸されたのは比較的最近で、1971年(昭和46年)のことだった。
 ところが、大前駅は1日5往復の普通列車しか入ってこない。というのも、全ての特急・多くの普通列車が、一つ手前の「万座・鹿沢口」駅(温泉街へのアクセスの拠点駅)で折り返してしまうからだ。大前駅は嬬恋村役場の最寄り駅だが、吾妻線が観光路線であることを象徴する運転系統だ。
 ホームは有効長が7両分あり、棒線駅である万座・鹿沢口駅の留置線としての役割も果たし、回送車両が入線することもある。線路の終端はそれからさらに100メートルほど奥の茂みの中にある。駅舎はなく、コンクリ製の比較的大きな待合室が設置されている。内部は清潔に保たれ、ベンチには座布団が敷かれていた。
 ホームの待合室の先のところに、小さなお地蔵様が立っている。なんだか不思議な形の、可愛い顔つき。旅の安全を願って作られたものだそうだ。

 駅前を吾妻川が流れている。清流の音が美しい。大前にも温泉があり、駅前の「つまごい館」で入浴できる。人が多く集まる観光地でなくて、静かなところに佇む温泉を楽しんでみるのも、旅として悪くはないのではと思ってしまう。