関東地方


駅の住人は猫。どこかの駅のように特別待遇されるわけでもない

10.12.18執筆


駅舎。無人駅だが、なぜか相当に大きい


海芝浦支線の分岐駅。分岐側のホームはカーブ上でかなり危ない
 鶴見線は、路線の成立過程ゆえに、途中で路線が3つに分かれるという独特の線形をしている。そのうち、鶴見を出て最初の分岐駅が、ここ浅野駅である。埋め立て地上にあり固有の地名がなかったため、鶴見線の前身・鶴見臨港鉄道の創設者であり、浅野財閥のトップでもある浅野総一郎の名前をとって駅名がつけられた。
 分岐点の先に駅を設置したため、ホームは本線と海芝浦支線の両方に設置されている。このため、鶴見方面へ向かう電車は、安善方面からと海芝浦からとでは到着ホームが異なり、あらかじめ確認してそのホームで待つ必要がある。特に、海芝浦からの鶴見行き電車は構内踏切を渡った先のホームにあるため、電車が接近してからそのホームに急ごうとしてももう手遅れ。分岐駅の宿命である。
 鶴見線は鶴見駅以外が全て無人駅で、もちろん浅野駅も無人駅ではあるが、なぜか大きな駅舎が鎮座している。外に置いてあるエアコンの室外機も比較的新しいものであり、何らかの運転管理にこの建物は現在でも使われていることが察せられる。新芝浦からの貨物運転の関係だろうか。
 利用客には工場関係者も多いが、住宅地もほど近いところにあるためその住民もそこそこいる模様。分岐駅らしい広いホームの花壇は、地元のボランティアの方々によって大切に整備され守られているようだ。
 だが、それだけではない。その恵まれた環境があってか、なんと猫が住んでいる。それも少なくとも4~5匹はいて、ホーム上をうろちょろしたり、寝転がったり昼寝をしたりしている。構内から逃げ出すこともなく、駅舎の裏手の薄暗いところを住処とし、駅のホームを居住地にしているようだ。猫たちとの出会いは1度きりではなく、筆者はここを訪れるたびにその姿を見ている。これも恐らく、地元の方々が大切に育てているものなのだろう。
 某路線では、猫を駅長にして観光客誘致に力を入れていたりするが、浅野の猫は特別扱いされることもなく、観光目当てに“利用”されることもない。この駅で静かに普通の暮らしを送っている。猫の自由なままに。