関東地方


待合小屋は木造。旧型国電の時代から健在だ

11.5.3執筆


駅南端にある構内踏切


…厳しすぎる!

 鶴見線の中で最も到達しづらく、最も人気のある駅が、ここ大川駅だろう。工場と住宅の隣り合わせになっているところを縫って走る鶴見線だが、周辺に全く住居がない大川駅には、工場通勤客のための電車が朝晩に数本入線するだけ。休日に至っては、一日わずか3往復という、関東地方の中でも最も列車本数の少ない駅のひとつだ。
 狭いホームと古びた木造の券売機小屋が旅情をそそる。休日にはほとんど鉄ちゃんのための駅と化していると言ってしまっても過言ではなかろうが、鶴見線が「都会の中のローカル線」と称されるための決定的要素こそ、ここ大川駅にあるのかも知れない。
 2008年に貨物扱いがなくなり、貨物ホームを兼ねていた広い構内は閑散としたまま。駅南側には線路を渡る構内踏切があり、脇には写真のような大変手厳しい注意書きがされているが、現在遮断悍が降ろされていることはおそらくないだろう。

 一部の方はご存じだろうが、ここ大川駅は1996年3月のダイヤ改正まで、関東で最後まで残った旧型国電・クモハ12が乗り入れる駅だった。鶴見線に遅くまで残った旧型国電は、末期にはここ大川と武蔵白石の間に閉じこめられ、大川支線列車の武蔵白石駅通過・103系化の際にその運転に終止符が打たれている。

 日本の産業を支える京浜工業地帯。そのど真ん中を走る鶴見線。地味で目立たない路線だけれども、電車が走ることによって、確実に日本の産業は支えられている。国内でも特に特殊な存在価値のある路線なだけに、この路線が末永く活躍し続けることを切に願うばかりである。