関東地方


東京のど真ん中に、こんな秘境駅があるとは!

11.1.31執筆


閑散としたコンコース。利用客はほとんどない


空欄の「駅周辺施設案内」が寂しさを物語る

市場前駅からのパノラマ写真を見る
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 ゆりかもめといえば、レインボーブリッジを渡り、臨海副都心であるお台場をぐるりと回る、無人運転の新交通システムであることはあまりにも有名。台場~新橋の間は通勤客でも非常に混雑し、日中の運転間隔は平日5分、休日4分という過密路線。ならばどの駅も利用客であふれているはずが…大間違い。ハイテク路線に取り残されたようにして、市場前駅はある。
 平成20年度の「東京都統計年鑑」のデータを元に計算すると、1日の乗車客平均はわずか27人。なぜなのか、理由は簡単。駅前に何もないからだ。

 おや? 駅名にもある「市場」はないのか? と思われたかもしれない。だが駅前に市場など存在しない。なぜなら、ここは市場“予定地”だからだ。石原都政が、手狭になった築地市場の移転予定地として選んだ場所なのである。当然、いずれは市場が建ち、築地の機能が移転し、賑やかな水産・青果市場の街へと生まれ変わることを期待したのだろう。
 だが、周知の通り、ここは東京ガスの施設の跡地で、土壌からベンゼンやヒ素などの有害物質が環境基準を遥かに上回る濃度で検出されている。都議会で民主党が第1党となり、党は安全性が確保されるまでここへの移転を認めない方針だ。市場前駅に実際に市場が建設されるかさえ不透明になりつつあるのだ。

 いつ市場が建つとも知れず、駅は四方を空き地に囲まれたまま、延伸開業でこの駅が誕生してから5年が経とうとしている。
 駅の下を走る都道は、お台場と豊洲・晴海を結ぶルートになっているため交通量が多いが、ここまで周囲に何もない駅はおそらく東京23区内では唯一。巨大都市東京に、とんでもない秘境駅が存在しているのだ。ホームにある「駅周辺施設案内」も当然空欄。時代の最先端をゆく新交通システムの駅に、これはいくらなんでも寂しすぎる!

 地下鉄有楽町線への接続を名目に、オリンピック招致と市場建設をにらんで有明から豊洲へ延伸されたゆりかもめ。だが2016年のオリンピックはリオに決まり、市場建設の件も白紙同然と、踏んだり蹴ったりで存在価値は薄れるばかり。愛知のピーチライナー(桃花台新交通)のようになってしまうのではないかと非常に不安である。
 築地は魚市場の街として発展し、今や魚屋や寿司屋の代名詞のようになっている。それを移転させることは、ふざけでは済まされない一大事なはずだ。都民はこの問題に関心を持ち、きちんとした意見を持つことが、この政治無関心の時代にあっても肝要ではなかろうか。