関東地方


駅舎のそばに電機メーカーの看板。ここまで企業に密着した駅が他にあるだろうか

10.12.17執筆


「最新」を追い求める電機メーカーの工場に、それとは正反対の駅舎が建つ


運河とはいえ、海芝浦駅同様に海に最も近い駅であることに変わりはない

 鶴見線海芝浦支線の中間にある駅。海芝浦は一般人は改札から出られない駅として話題になったが、浅野方面からの公道はこの駅前まで通じており、新芝浦駅は車での到達も可能である。臨港バスの停留所もあるが、運転本数は少ない模様。
 東芝の京浜事業所に隣接しており利用者は東芝関係者がほとんどで、簡易Suica改札機が発する音もほぼすべてが定期利用を表す「ピッ」という単発音。通勤時間帯こそ混雑するが、就業時間中は2時間に1本という、ローカル線並みの運転本数となり、非常に閑散とした時間が流れている。ましてや、この埋め立て地から人が消える土休日は一日中人もまばら。いわゆるゴーストタウンである。
 線路は浅野からここまでが複線で、海芝浦までの区間は単線になっている。とは言うものの、当駅からしばらくの間は工場への非電化の引込み線が並走しており、単線並列のような風合いになっている。一応、新芝浦は貨物取扱駅で、工場へ搬出入する大型機械を輸送するのにたびたび鶴見線が使われているそうだ。

 電機メーカーとは、常に最新技術を用い、時代の最先端を行く便利な製品を作るということが基本姿勢である。そんな最先端の工場に通勤するための駅だって、新しいきれいな建物だろうが…これは嘘だった。
 なんと駅舎は木造。ホーム屋根もベンチも木製。ハイテク産業だの軽薄短小型工業だのと言われる現代だが、これらの設備はそれを全く思わせない。高度成長期、貧しいけれども輝いていた時代(と、高校の音楽の先生が語る時代)をまじまじと感じさせる。

 駅は、海芝浦駅と同様、ホームのすぐ下が海で、北浜や青海川に引けを取らない、まさに「海のそばの駅」。海とはいえ、それは運河であり自然の風景とはほど遠いものなのかもしれないが、人間は太古から海洋と共に暮らしてきたのだから、海という自然を人為で活かして作った風景もまた、趣き深いものと言えるのではなかろうか。