関東地方


北の玄関口として長年親しまれた上野駅。駅舎は築80年も目前

11.2.21執筆


上下2層式のホーム配置が独特の雰囲気を醸し出す。
手前にあるのが「三相の像」、奥に啄木の歌碑も見える


入谷口改札外に鎮座する「ジャイアントパンダの像」

 日本最初の鉄道会社・日本鉄道が、上野から熊谷までの鉄道を開業させたときが、上野駅の歴史の始まり。時は1883(明治16)年。以後、東北・北海道方面への旅行の起終点に当たる駅として、長年機能してきた。集団就職で最初に降り立った「東京」とは上野だったという人も数多いはずだ。一方で、東京周辺に住む東北地方をはじめとした地方出身者にとって、上野はふるさとへの出発駅であり、また東京でふるさとの空気に 触れられるスポットでもあった。構内に歌碑が設置されている、石川啄木の歌「ふるさとの訛なつかし/停車場の人ごみの中に/そを聴きにゆく」が、それをうまく表現している。

 中央口の、堂々とした佇まいの駅舎は、1932(昭和7)年に竣工したもの。関東大震災を受けて、北の玄関口として駅の機能を強化させるため、乗降客の動線、市電や自動車との接続などを徹底的に考慮した、非常に合理的な設計の下に建てられた。現在は廃止されているが、改札と同フロアの2階が車寄せになっていた。
 狭いスペースに多くの列車を発着させるため、構内の構造にも気を配っている。その中でも大きなものは、電車線と、東京方面への引き上げ線に繋がる通過線を高架、残りを地平とし、方面別に発着列車を上下に分けるという、非常に珍しい2層式構造のホーム。在来線の長距離列車が減少し、当時の利用法からは崩れつつあるが、現在でも特急列車は全て地平ホームから発着している。頭端式の構造も、ヨーロッパの駅では多く見られるものではあるが日本国内、とりわけJRでは数えるほどしか存在しない。

 古くから各方面への玄関口として機能してきた上野駅には、待ち合わせのためのモニュメントも多い。その中でも代表的なのが、中央口改札外「翼の像」と、地平ホーム頭端部にある「三相の像」。これらには今でも、常に待ち合わせの人が絶えない。
 また、2階・入谷口改札外には「ジャイアントパンダの像」がある。こちらは、ガラスケース内に巨大なパンダのぬいぐるみが鎮座。絶滅が危惧される動物ながら人々に愛されるパンダ。…そういえば、上野動物園にパンダが帰ってくることが決まり、街は大いに沸いているとか。

 新幹線が東京に乗り入れ、長距離列車のターミナルとしての役割は薄れつつある上野駅だが、宇都宮・高崎線方面の列車は現在でも上野が始発駅で、旅立ちの駅というイメージはまだまだ消えたものではない。中電の一部を東京まで乗り入れさせる東北縦貫線の計画も進行中であるが、ターミナルとしての機能を喪失することは当分考えられないであろう。まだまだ捨てたものではない、という表現が似合う駅だ。