近畿地方


207系という近代型通勤電車も、こんな山の中を走っている

11.6.5執筆


駅から武庫川を見下ろす


駐輪場があるが自転車はほとんど駐まっていない

 神戸という大都市を抱える兵庫県だが、内陸は急峻な地形で交通の難所になっている。この福知山線も、山の間を縫って尼崎から福知山盆地へ向けて走る路線で、宝塚の駅を過ぎると急に車窓に山地の様相を見せてくる。長いトンネルに突入し、トンネルを抜けたところに姿を現すのが、ここ武田尾駅である。
 営業キロにして尼崎からわずか25km。名塩トンネルと第1武田尾トンネルに挟まれるようにして、対向式のホームが下を流れる武庫川の上に架かっている。ホームの一部は第1武田尾トンネルにめり込んでおり、神泉駅と似たような、トンネル内外が混在する駅になっている。駅員はおらず、完全な無人駅である。
 駅にほど近いところに武田尾温泉があるほかは、周辺に民家は見えず、実際の武田尾集落も駅からかなり離れている。現在、駅としての機能は、駅の北方にある西谷地区からのバス客を受け入れることに中心が置かれている。そのほか、渓谷を歩くハイキング客の姿も点々と見られる。駅前には駐輪場が備えられ、係員も常駐しているが、実際に駐めてある自転車はごくわずかだった。

 福知山線は近代化が遅れ、1980年代に入ってもDD51などが旧客を牽引する列車が当たり前のように走っている路線で、ここ武田尾駅も、川に沿った旧線の中にある駅だった。
 だが、新興住宅地が興る中で、路線の必要性が再認識される。そこで1986年に、武田尾駅を含む山岳区間の生瀬〜道場間を、長大トンネルを使った新線に付け替えることとし、同年に電化された。現在の高架の武田尾駅の供用が始まったのもこのときで、以後福知山線は通勤通学路線として急速に発達していくことになる。現在では武田尾駅にも毎時4本程度の電車が発着している。

 川のせせらぎで気分をよくしながら、ふと考えた。武田尾を秘境駅だ何だと言う鉄道ファンも多い。筆者もその話を聞いて訪れたのだから偉そうなことは言えないのだが、やはりどんな駅にも、その駅を利用する人の生活があり、武田尾駅などはバスターミナルとしてきちんと機能している。ここを生活の拠点駅にしている方々も多くいらっしゃるわけで、さまざまな生活環境やスタイルがあるというのを理解すべきだと、駅は教えてくれたようだった。